1 調査の概要
(1)趣旨
「確かな学力」の育成を支える基本的な学習習慣と生活習慣の状況を把握・分析し、児童生徒の「学びに向かう力・人間性等」の涵養に向けた学習指導や学級経営・生徒指導の指針づくりに役立てる。
(2)調査対象
市内小学3年生~6年生及び中学1年生~3年生 2,245名
(3)調査内容
児童生徒の「生活習慣」「学習習慣」「学級環境」についての意識調査を実施する。
(4)調査期間
令和2年6月29日(月)~7月3日(金)
2 調査結果
調査対象となった市内の小学校3年生から中学校3年生2,245名のデータを基に、丹波篠山市児童生徒の特徴を示す。(5)では、令和元年度の同一集団との比較を通して、コロナウイルス感染予防に伴う臨時休業や新しい生活様式による影響をみる。
(1)生活習慣について
・睡眠や起床、メディア利用の時間などの基本的な生活習慣を意識している児童生徒が多い。
・睡眠に関する習慣の定着率が全国に比べて高い。
・ゲームやネット等の利用時間を決めている児童生徒の割合が全国に比べて高い。
・学校への持ち物を準備する習慣の定着率が全国に比べて高い。
・中学生の意識の高さが目立つ。
(2)学習習慣について
・中学生の予習や復習の習慣の定着率が全国に比べて高い。
・自分で計画を立てて勉強する児童生徒の割合が全国に比べて高い。
(3)学級環境について
・所属する学級に対する肯定感は、どの学年も全国に比べて高い。
・9割以上の児童生徒が「今のクラスが好き」「クラスにはいいところがある」と答えている。
・約9割の児童生徒が、学級に助け合う雰囲気があると答えている。中1、中2の肯定率は、全国に比べて10ポイント以上高かった。
(4)自己肯定感について
・「学校生活の中でクラスのみんなから注目されることがありますか」では、全国に比べて低い学年が多い。小3と中1は、全国に比べて5ポイント以上低かった。
・他者からの期待感についても、中2以外は全国を下回った。中1と中3は、全国に比べて5ポイント以上低かった。
(5)新しい生活様式の影響(昨年度の同一集団との経年比較)
a.生活習慣について(経年比較)
・生活習慣全般について、大きな変化はみられない。
・ゲームやネットの利用時間を決めている児童生徒の割合は低下した。小4、小6、中2は5ポイント以上低下した。
b.学習習慣について(経年比較)
・予習をする習慣の定着率が小5以外の学年で高まった。中1は24ポイント、中3は29ポイント高くなった。
・復習の習慣については、中1と中3で伸びがみられた。中2は低下した。
c.学級環境について(経年比較)
・学級に対する肯定感については大きな変化はない。どの学年も約9割の肯定値を保っている。
d.自己肯定感について(経年比較)
・学級で他者から注目されていると感じている児童生徒の割合は低下傾向がみられた。小4と中1は10ポイント近く低下した。
・他者からの期待感についても低下傾向がみられた小5は20ポイント以上、中1は10ポイント以上低下した。
3 考察
■規則正しい生活を意識する児童生徒の割合が高いことが分かった。「新しい生活様式」の定着により、生活習慣や健康維持について意識する機会が増え、規則正しい生活習慣の形成に寄与したと考えられる。
■学習習慣では、予習をする児童生徒の増加が顕著だった。また、計画的に学習する児童生徒も増加傾向にある。臨時休業を経て、各学校が授業や学習の進め方を見直したことで、児童生徒の家庭学習のあり方にも変化が生じたと考えられる。また、臨時休業中や学校再開直後の調査では、学習面に不安を感じる児童生徒が多かった。学校で学習することのできない期間を経験し、「勉強は与えられてするものではなく、自分でするもの」というように児童生徒の学習に対する印象が変化した可能性も考えられる。
■学級環境について、多くの児童生徒が肯定的に捉えていることが分かった。学校再開後、各学校では教職員が学級集団づくりに重点をおいて取り組んだ成果と考えられる。行事や集団活動を控えるなか、教職員は授業を通して学級づくり、集団づくりを行ったものと推察される。学習集団の安定は、集団の学力向上に寄与する。今後も学びあう集団づくりを目指し、継続した取り組みを進める必要がある。
■自己肯定感については課題がみられた。特に、他者からの評価についての課題が顕著だった。感染症予防のため、学校行事や児童会・生徒会活動など、異学年交流活動を控えている学校が多く、児童生徒が協働する機会が減っている。その結果、他者から頼られたり注目されたりする機会も減っている可能性があり、他者からの評価についての肯定的回答が低下したと考えられる。学校は、授業や行事など学校での活動において、児童生徒が教師から期待されていると感じたり友だちから頼られていると感じたりする活動を積極的に取り入れるとともに、活動の後には振り返りの機会をつくり、周囲からの適切なフィードバックを得る機会をつくる必要がある。